第410章

渕上純は、物心ついた頃からその類稀な美貌で周囲を惹きつけてきた。どんな年齢であっても、彼女に追従し、言い寄ってくる男が絶えることはない。美しさがもたらす特権と恩恵、それらを享受することに彼女はとっくに慣れきっていた。

大通りを歩いているだけで、見知らぬ誰かから好意や視線を向けられる。そんな事態も、渕上純にとっては日常茶飯事だ。

今の彼女にあるのは、ただ一刻も速くこの場所から逃げ出したい、そして神原文清の顔など見たくないという衝動だけだった。

だからこそ、彼女は少しの躊躇いの後、こう告げた。

「ええ、助かります。この天気ですし、タクシーも捕まりそうにありませんから」

男は温和で洗練さ...

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