第437章

「自分で着てください」

「身体に力が入らないんだ。着せてくれ」

 神原文清はそう続けた。

 口が利けることと、辛うじて身じろぎができること。それ以外、今の神原文清は完全に『模範的な病人』になりきっていた。要するに、渕上純に甲斐甲斐しく世話を焼かせたいだけなのだ。

 渕上純には、この男がわざと甘えているのか、それとも本気なのか判別がつかなかったが、彼が発熱しているのは紛れもない事実であり、看病が必要な状態であることに変わりはなかった。

 薬を飲ませるまでのあれこれを終え、渕上純は彼に布団を掛け直す。その口調は、無意識のうちに優しさを帯びていた。

「はい、これでよし。ちゃんと休んでく...

ログインして続きを読む