第470章

「俺たちは夫婦だ。夫婦が抱き合うのは当たり前だろう。抱擁どころか、何をしても許されるはずだ」

 神原文清は悪びれる様子もなく、平然と言い放った。

「適当なこと言わないで」

「絶世の美女が、言葉遣いには気をつけた方がいい。それに、旦那さんに向かってその口の利き方はなんだ? 旦那さんが傷つくとは思わないのか?」

 神原文清の瞳が一瞬光り、口元が微かに歪んで笑みを形作る。

 途端に、渕上純の顔が朱に染まった。頬が火照るのをはっきりと感じ、その熱は瞬く間に耳の裏にまで広がっていく。

 懐かしくもどこか他人のような気配、耳元を掠める温かい感触。その感覚に抗えず、手足は拒絶しているのに、身体...

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