第527章

新田佐美のその様子を一目見ただけで、渕上純にはそれが演技だと即座に分かった。だから敢えて無視を決め込み、勝手に地面に這いつくばって病人のふりをさせておくことにした。

なにせ、かつて鈴木真子に監禁されていた頃、自分も同じような真似をしたことがあるからだ。一目で嘘だと見抜ける。

優雅に赤ワインを口に含む。まだデキャンタージュが不十分なのか、あるいは飲むペースが早すぎたのか、深紅の液体には微かな苦味が混じっていた。

新田佐美の来訪は、純の気分を害するには十分すぎる出来事だった。だから少しばかりのアルコールで神経を麻痺させる必要があったのだ。

そうでもしなければ、今にも罵詈雑言を浴びせてしま...

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