第011章 あの時失われたお嬢様

白石彩花は、どうやって責任を冬木涼子に押しつけるか――もう頭の中で算段をつけていた。

そのとき、突然、激しい咳き込みが響いた。

老人がごぼりと大量の血を吐き、続けざまに胸が大きく上下する。空気をむさぼるように、何度も何度も吸い込んだ。

青紫にこわばっていた顔色が、みるみるうちに赤みを取り戻していく。

運転手が歓喜の声を上げて老人に駆け寄った。

「旦那様、旦那様! よかった……よかったです、もう大丈夫だ……!」

感極まって、今にも泣き出しそうだ。

白石彩花は目を見開いた。信じられない――ありえない。

さっきまで、明らかに息がなかった。なのに、どうして生き返るの?

それに冬木涼...

ログインして続きを読む