第027章 もう追いつけない

冬木陽斗は押し倒されそうになり、反射的に冬木涼子を見た。

彼女は風の中に立っていた。冷え切った佇まい。こちらへ向ける視線も、氷みたいに無機質で、温度というものがない。

――こんなの、陽斗の知っている冬木涼子じゃない。

昔の彼女は、絶対にこんなふうに接してこなかった。

言いようのない胸騒ぎが、ふいに込み上げる。

それでも負けを認めたくなくて、意地であの車を一瞥した。

「べつに珍しくもねえだろ。たかがボロ車じゃん。俺は冬木家の三男様だぞ? 欲しい車くらい、いくらでも――」

相馬陽平がわざと煽る。

「はいはい、冬木家の三男様はすごいすごい。じゃあ買えば?」

冬木陽斗は腹立ちまぎれ...

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