第029章 彼は彼女のことを少しも気にしていない

田中は困ったように言った。

「若様はお怒りではありません。夜食を残しておけと仰せでした。さあ、お早くお入りください」

冬木涼子が中へ入る。

田中が玄関の大扉に鍵をかけた。

リビングへ。

田中は使用人に命じ、夜食を卓へ運ばせた。冬木涼子の大好物、海鮮粥だ。

冬木涼子はおとなしくダイニングに座り、粥を口に運ぶ。

……けれど、味なんてまるで分からなかった。

胸の奥が、もやもやと詰まっている。

外で十時過ぎまで過ごしてしまった。御堂柊吾が怒っているんじゃないかと怯えていたのに――怒られないとなると、それはそれで腹の底がざわつく。

本当に好きなら、こんな遅くまで外で遊ばせて、何も言...

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