第055章 彼は親友をそそのかして自分の妻を追わせる

「……母さん?」

冬木涼子はふっと笑った。だが次の瞬間、声が刃みたいに尖る。

「あなたごときが? 私に母さんって呼ばせるつもり? 冬木美蘭――あのとき、どんな目的で私をさらったのか、自分がいちばん分かってるでしょ!」

冬木美蘭の瞳が震えた。信じられない、という顔で冬木涼子を見つめる。

どうして、そんなことを――。

あの頃のことを……知ってるの?

あり得ない。知っている人間なんて、ほんの一握りのはずだ。なのに、どうしてこの子が。

冬木美蘭には、何ひとつ理解できなかった。

冬木涼子は言い争う気もないらしく、淡々と切り捨てる。

「今日ここであなたたちが言ったこと、名誉毀損に当たる...

ログインして続きを読む