第108章

  その黒い影を見た瞬間、神崎飛鳥は察した。やっぱり――河童が身代わりを引きずり込んで騒ぎを起こしている。

  河童というのは、多くが無念の死を遂げた者、あるいは入水して死んだ者が変じた悪霊だ。輪廻に戻れず、水の中を彷徨うしかない。水中ではとにかく強い。腕力も、泳ぎの速さも桁違いで、まともにやり合って勝てる相手など滅多にいない――もっとも、どれだけ強かろうと水から離れられない。

  その束縛を解く方法は二つ。ひとつは身代わりを見つけること。ただし身代わりは三年に一度しか取れない。もうひとつは善行を積み、徳を重ね、いつか成仏して水を離れること。

  ところが、この川の河童は明らかにルール...

ログインして続きを読む