第109章

 ほどなくして、村田のいちばん下の孫も川から引き上げられた。だが、まだ両手だけが水の中に残っている。薄い水の膜の向こう、黒い影がぴたりと貼りついていた。

 村田は見た。

 河童だ。

 やつの髪は、やたらと長い。どこまでも長い緑色で、水草がそのまま頭に生えたみたいにゆらゆら揺れている。顔は川水にふやけて青白く、血の気がない。猩々みたいに赤い目が、まっすぐ村田を射抜いていた。

 それでも、孫の手だけは離さない。

 そのとき。

 赤い服の女の幽霊がふわりと宙に浮かび、長い鞭をぶんっと振り抜いた。鞭先が水面を裂き、河童へ叩きつけられる。

 「この河童! 何歳の子どもまで引っ張る気? そ...

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