第122章

  彼女が出かけた、その夜のことだった。

  しんと静まり返った部屋に、不意に招かれざる客が入り込む。

  猿みたいに尖った口元の男が、固く閉ざされていた玄関の扉をこじ開けた。下見は済ませてある。この家に住んでいるのは、薄気味悪い長髪の女がひとりきり。友だちもいないらしい。さっき、リュックを背負って出ていったばかりで、しばらく戻らない――そう踏んでいた。

  男がここを狙った理由は単純だ。

  あの長髪の女、食い物がやけにいい。魚はどれも丸々太っていて、しかも大きな蟹まで買ってくる。あの蟹の身の詰まり具合といったら、見ているだけで唾が出た。しかも一度に袋を二つ。ざっと二十匹はあったは...

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