第61章

  彼はひとつ息を吸い込み、顔をそむけた。言葉を選ぶ。どう言えば食われずに済んで、なおかつ相手の機嫌も損ねないのか――。

  バスはどんどん奥へと走っていく。ここらは人通りの少ない道で、車はおろか歩行者もほとんど見かけない。乗り降りもまばらだったが、ある交差点で男が三人、まとめて乗り込んできた。

  三人は最前列へ。横一列に並んで座り、スマホもいじらず、眠りもしない。ただ背筋を伸ばして、棒みたいにじっとしている。

  高瀬拓真はちらりと見ただけで、深く考えなかった。もう一度、隣の神崎飛鳥へ目をやる。彼女は相変わらず眠っていて、起きる気配がまるでない。

  起こすのも怖い。拓真は急に後...

ログインして続きを読む