第62章

 高瀬拓真は目をくるりと動かし、胸の内で策を組み立てた。まずスマホを取り出し、安倍晴明に短いメッセージを送る。気づいたら、すぐ来てくれ――そう願いながら。

 送信を終えると、彼はようやく立ち上がった。降りる素振りを見せた、その瞬間。

 ぴたり、と身体が止まる。

 次いで、がくがくと震えながら床へ崩れ落ちた。

 「まずい……心臓が……発作だ! は、早く病院に……!」

 一瞬で、静かだった車内がひっくり返った。

 子どもはわんわん泣き出し、男が三人、わたわたとスマホを握って救急車を呼ぼうとする。

 「なんだよこれ、電波悪すぎ! 全然つながんねぇ!」

 その横で、女が甲高い声を上げ...

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