第63章

 神崎飛鳥が目を覚ました瞬間、思考が真っ白になった。窓の外に広がる見知らぬ景色。胸がひゅっと縮む。

 ――やばい。乗り過ごした?

 慌てて声を張る。

「運転手さん、いまどこですか?」

 そこでようやく気づく。車内の乗客が、誰ひとり自分の席にいない。みんな前方、降車口のあたりに固まっていた。

 子どもはしゃくり上げて泣き疲れ、声まで枯れている。老婆は孫を抱きしめ、座席の陰に身を潜めたまま、口の中で「南無阿弥陀仏……如来さま……観音さま……」と途切れ途切れに唱えていた。女が二人、抱き合って泣いている。男が四人、ドアの前に立ち、いつでも飛び降りられるような顔つきだ。

 飛鳥が突然しゃべ...

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