第116章

落合麗子の手入れの行き届いた顔に、瞬く間に霜が降りた。

息子に公然と逆らわれた屈辱に、唇まで小刻みに震える。手にしていたティーカップが、どん、とテーブルに叩きつけられた。

「正気じゃない! 睦生、あんた本当に狂ってる!」

鋭い叱責。長く上に立ってきた者の威圧が、怒りに引き裂かれそうなほど剥き出しになる。

「そんな素性の知れない女のために、実の母親にまで歯向かうなんて! 落合家が目に入らないの!」

落合睦生は、聞こえないふりをした。

ただ私を、さらに深く背中へ隠す。陰のある目は、底の見えない寒い淵みたいに沈み、母親へ冷たく突き返す。

「俺の女のことは、母さんが気にする必要ない」

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