第117章

落合睦生の顔に宿る陰りは、濃すぎて今にも滴り落ちそうだった。

彼は私の手首を乱暴に掴む。骨ごと握り潰されるかと思うほどの力で、そのまま引きずるように踵を返した。

「松崎莉緒。いいか、今夜は一歩たりとも俺の視界から消えるな」

声を潜めているのに、刺がある。歯の隙間から絞り出したみたいな言い方で、鉄の匂いまで混じっている気がした。

強く引かれて、私はよろける。けれど胸の底に溜まっていた悲しみは、この瞬間、妙に澄んだ冷静さへと変わっていた。

口角を裂くみたいな冷たい笑みを作る。

「落合睦生。わざわざ私をここへ連れてきたのは、それが目的だったんでしょう?」

彼の足が止まる。振り返った目...

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