15

六条修介が振り返って私を見る。夜の闇に沈むその氷青の瞳は海の底みたいに深く、私の取り繕いも疲れも、全部吸い込んでしまいそうだった。

「松崎莉緒。俺の世界へようこそ」

私はその目を見返したまま、長いこと言葉を失った。

それから先の私の生活は、仕事だけで埋め尽くされた。

六条修介は言ったことを必ずやる。ヴィクター・ファミリーが抱える合法事業の棚卸しと再編、その一切を私に丸投げしてきたのだ。

毎日、膨大な書類と数字に頭から突っ込み、汚れのない巨大な商業帝国の骨格を組み上げていく。ふと顔を上げれば、オフィスを隔てるガラス壁の向こう――ファミリーの厄介事を捌く男の背中が見えた。

その日の午...

ログインして続きを読む