第52章

私が一歩近づいた瞬間、少女の恐怖は限界まで跳ね上がった。火傷でもしたみたいに手を引っ込め、怯えきった目で――私の少し後ろにいるアンをちらりと確認する。次の瞬間には、驚いた小動物そのもの。必死に後ずさりしながら薄い毛布をきつく抱え込み、頭まで潜り込ませた。

「い、いや……いや……」

毛布越しに、くぐもった嗚咽。ドイツ語に、千切れた英語が混じる。

「わたし、なにも知らない……なにも、見てない……お願い……放して……」

さっきの指さしよりも、この急転直下のほうが、よほど背筋を冷やした。

彼女は人違いをしたんじゃない。怖くて――もう認められなくなったのだ。

私はその場に固まり、差し出した...

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