第55章

彼女の瞳に浮かんだ嘲りを、私は見逃さなかった。単なる敵意じゃない。猫が鼠を転がすときの、勝ちが決まっている側の余裕――そんな戯れだ。

「わたし……」

喉が乾いてひりつく。頭の中では警報が鳴りっぱなしだった。

悟られたら終わる。

一切の綻びを、見せてはいけない。

息を深く吸い込み、宙で固まっていた手をゆっくり下ろす。教授に見せられた証拠の数々を、心のいちばん底へ叩き込んだまま、彼女の視線を正面から受け止めた。

言い訳もしない。慌てもしない。

ただ静かに、こちらから問い返す。

「あなたこそ、何を探してるんです?」

六条莉々は、私がそう出るとは思っていなかったのだろう。口元に張り...

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