第60章

「松崎さん、例の数社の件ですが──すでに2社が、こちらの一次買収意向に同意しました」

小野ディレクターの声は、隠しきれない高揚を含んでいた。

「あなたの『地方から包む』やり方、見事です。向こうは得したつもりでいる。自分たちが持ってる地味な環境系の特許と、コミュニティ医療のライセンスが、組み合わさったときにどれだけの価値になるか……まるで分かってない」

「助かったわ、小野ディレクター」

こめかみの奥がじんじんと脈打つ。指先で軽く揉むと、勝手に口元が上がった。

「ただ……」小野ディレクターが急に声の調子を変える。「ひとつ、妙な点が出ました。デューデリの最中、データセキュリティ系の小さな...

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