第74章

六条修介は椅子から立ち上がり、私のそばへ来ると、背後からそっと抱き締めた。薄っぺらい慰めの言葉はない。ただ彼の体温だけが、氷みたいに冷えた私の身体を包み込む。

「莉緒」

頭頂に顎を乗せ、かすかに痛みを滲ませた声で言う。

「……すまない」

その「すまない」は、彼自身のためじゃない。彼が背負う姓のため。消せない闇の歴史のため。

私は彼の胸に額を預けたまま、ようやく――音もなく涙を落とした。

泣いているのは祖母の死そのものじゃない。二十年以上遅れて突きつけられた真実。『事故』の下に押し込められていた、吐き気がするほどの冷淡さと残酷さ。

どれほど時間が経ったのか。私は涙を止め、彼の腕の...

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