第77章

私はこの男のことを、嫌になるほど分かっている。いったん隙を与えたら、今夜はもう、まともに仕事のことなんて考えられなくなる。

怖いのは――彼に完全に呑まれてしまって、自分のペースを二度と取り戻せなくなることだ。

「莉緒」

しつこく追いすがってきた彼は、今度は背後から抱き締め、私の肩に顎を乗せた。駄々をこねる子どもみたいに。

「今夜だけ」

耳元に落ちる熱い息。私の防壁が、じわじわと崩れていくのが分かった。

この執拗さに根負けして、私はようやく折れた。けれど、最後の一線だけは死守する。

「パーティーが終わってから」

私は顔を背け、寄せてくる唇を避けた。

「全部うまくいったら……そ...

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