第82章

息を殺し、足音まで消すつもりで近づいていく。そっと――本当に、そっと――その扉を押し開けた。

室内の光景を見た瞬間、全身の血が凍りついた。

六条修介が、部屋の中央に立っていた。こちらに背を向けたまま。

高そうな白いシャツは血を吸いきって、目に痛いほどの暗い赤に染まっている。

指先から落ちる血が、一滴、また一滴。つるりと磨かれた床に叩きつけられ、じわりと小さな赤い滲みを広げていく。

こわばった身体が、ゆっくりとこちらへ向き直った。

比類なく整ったその顔には、彼のものではない血の筋がいくつも貼りついていて、肌は紙みたいに白く、唇からは色が消えていた。

いつもなら濃い感情が渦巻いてい...

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