第84章

葛城研二が背後で叩きつけるように扉を殴る音は、だんだん遠ざかっていった。やがて、底なしの闇に呑み込まれる。

私はそれを聞かなかったことにした。恐怖で暴れていた胸の奥の鼓動だけが、この決断を下した瞬間、奇妙なくらいすとんと落ち着いた。

――そう。証拠だけを並べれば、すべては六条修介を指している。

けれど理性も、直感も、弁護士として幾度となく人間の醜さを解剖してきた本能も、同じことを告げていた。

こんな単純な話で終わるはずがない、と。

それに葛城研二の証言は、一見もっともらしいくせに穴だらけだ。彼が聞いたのは「助けて」という声と、「六条修介」という名前だけ。肝心の殺戮の過程については、...

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