第90章

一文字一文字が、あいつの用意していた逃げ道だった。

私はそのまま病院へ運び込まれた。

検査は一通りやった。結果は、精神的ショックが強すぎるだけで、外傷はなし。

――でも分かっている。

いちばん大事なものは、あの大火と一緒に、冷たい海の底へ沈んだままだ。

それから数日間の私は、魂を抜かれた操り人形みたいだった。

世界は白と黒に塗り潰され、食べ物は味がしない。耳に入ってくるはずの音も、どこか遠い。

ただ目を開けたまま、頭の中で何度も何度も巻き戻す。

爆発。炎。――そして、彼の最後の口の形。

生きろ。

残酷すぎる一言。

あの人は自分の命で、私に一生解けない刑罰を刻みつけた。

...

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