第6章
琉生視点
健人が嘲るように言った。
「たかが、あの時のガキのことでか?」
俺の体が、びくりと跳ねた。
有紀は声を上げて笑った。その声には、勝ち誇った響きが満ちている。
「そうよ。そういえば、あの流産演技は傑作だったわね。今の私でさえ、当時の自分を褒めてあげたいくらい——たった一回の芝居で、あいつに五年も罪悪感を抱かせられたんだから」
その瞬間、世界がぐらりと歪んだ。
流産が……演技だった?
五年前、俺と有紀が熱愛中だった頃、彼女の妊娠が発覚した。当時、音大の合格通知を受け取ったばかりだった彼女とは、留学するかどうかで何度も衝突していた。俺は彼女にこの街に残ってほし...
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