第6章

 その呼び名に、全身の鳥肌が立った。

 この三年間、彼が私の名前を呼んだ回数なんて片手で数えられるほどだというのに。

「ご家族の方?」

 白川絵雅が大きな目を瞬かせ、興味津々といった顔をした。

「縁起の悪い元夫よ。私に家族はいないわ。みんな死んじゃったもの」

 私は背を向け、腕を組んで精一杯の嫌味な顔を作った。

「何? 離婚して数日で会社が倒産でもした? それとも可愛い愛人の黒川カレンに捨てられて、泣きつく場所がなくなった?」

 彼はいつものように言い返すこともなく、ただじっと直視してきた。その声は酷く掠れていた。

「病気のこと、どうして言わなかった」

 井上灯里と白川絵雅...

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