第5章
ずいぶん時間が経ったはずなのに、今思い出しても、やっぱり胸が締めつけられる。
私は母さんが大好きだった和菓子を買い、最期のお別れをしに墓参りへ行くことにした。
どうせ私ももうすぐ死ぬ。これからはもう、来てあげられないだろうから。
墓地へ向かう前に、漣の会社に寄って取り戻しておきたいものがあった——母さんが昔、浅草寺で買ってくれた達磨だ。
それは一対の赤い達磨で、ころころとしていて可愛らしかった。
母さんは漣のことを気に入っていた。あの頃、私たちはまだ深く愛し合っていて、母さんも病気にはなっていなかった。
母さんは二つの達磨に願いを込めた。小さいほうは私の無病息災を、...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
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