第6章
意識が混濁する闇の中で、誰かが泣いているのが聞こえた。
「なんでだ、なんで血が止まらねえんだ……」
それは城崎漣の声だった。切れた弦のように、ひどく嗄れている。
「浅見萌、頼む、俺を怖がらせないでくれ」
鼻をつく消毒液の臭いに、自分が病院のベッドに横たわっているのだと悟る。
耳元で、医師の冷静な声がした。
「城崎様、どうか落ち着いてください」
「本来であれば、来年の春までは生きられたはずです。あるいは、もう少し長く」
医師は言葉を切り、短く息を吐いた。
「ですが奥様は、お金がないから治療はしないと……」
「もはや、治療を継続する意味はありません」
数秒、空気...
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