第6章

何かを言おうとしたその時、和室の襖がすっと開いた。

佐藤真奈が、目を赤く腫らして出てきた。その顔には、はっきりと涙の跡が残っている。彼女はもうあの地味な少女を装った姿ではなく、元の洗練された装いに着替えていた。

神崎家の母親は優雅に湯呑みを置き、その声は穏やかでありながら、有無を言わせぬ響きを持っていた。

「私どもは子供の選択を尊重する家風でございます。佐藤さん、今後は、どうかご遠慮なくお訪ねくださいませぬよう」

佐藤真奈の瞳が屈辱に染まる。彼女は神崎増山の方へ歩み寄ろうとしたが、彼はまるで彼女が存在しないかのように、冷淡な視線を別の場所へ向けていた。

無視された佐藤真奈...

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