第9章
莉佳視点
季節が移ろう中、町中の人々は武田亮太の人生が音を立てて崩れ去っていくさまを目の当たりにしていた。
その話は、断片的な情報として、さまざまな人から少しずつ耳に入ってきた。咲良が昼食を食べに秋山食堂へ来た時にも話題に出たし、佐藤さんがコーヒーの代金を支払う際にも口にした。ある日曜日には、三浦先生でさえ、悲しげに声を潜めてそのことに触れていた。
亮太は青葉町ではどこにも職を見つけられなかった。小学校、短大、図書館にまで応募したようだが、誰も彼を雇おうとはしなかったのだ。資格を失い、評判も地に落ちた彼は、結局、実家の金物屋で色褪せたエプロンを着け、棚に商品を補充して過ごすことに...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
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