第8章

佑梨の視点

俊介に言われた通り、家にいるべきなのに、私にはできなかった。彼を一人でこの状況に立ち向かわせるなんて、できない。

杉本グループの本社は、ガラス張りの鉄骨造で、まるで権力を見せつけるかのような建物だった。最上階の理事会室は、その中でもひときわ威圧的だ。私はドアの隙間から中を覗き込み、息を呑んで成り行きを見守っていた。

永遠に続くかのような長いテーブルの両脇には、石像のような顔をした白髪の理事たちが並んでいる。俊介は上座に座り、完璧なスーツを着こなし、表情は読み取れない。彼の向かいには大和が立っていて、その笑みは私の背筋をぞっとさせた。

「皆様」大和の声には、偽りの気遣...

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