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第十六章 - 彼

「野生動物みたいに檻になんて入れさせないから!」私はこのクソ野郎のアルファに向かって怒鳴りつけた。

目の中に泥が入ってしまっていて、まだ開けることができない。とにかく顔を洗って、目をすすぎたかった。彼が私のすぐ目の前に立っている気配を感じる。彼の裸の体のことを考えずにはいられなかった。

「自分の姿を見てみろ」彼はそう言って、優しく私の髪を一房、耳にかけた。「お前こそ野生動物だ」その声を聞いた瞬間、背筋に電流が走った。体の奥底から湧き上がる、彼に寄りかかりたい、触れたいという衝動と必死に戦わなければならなかった。

足音が近づいてくるのが聞こえた。ニコだといいなと願ってい...

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