第5章
司視点
彼女は逃げた。
俺はリビングの真ん中に立ち尽くし、テーブルに置かれたカードキーをただ見つめていた。
何度も電話をかけた。だが、何度かけても留守番電話に繋がるだけだった。
俺は苛立ちに任せて、スマホをソファへと投げつけた。
桜井結衣――お前は一体、何から逃げているんだ?
秘書から着信があった。電話に出た俺の声は、自分でも驚くほど掠れていた。
「見つかったか?」
「黒崎社長。航空券も、新幹線や特急の切符も、購入された形跡はありません……」
「引き続き探せ」
電話を切り、落ち着きなく部屋の中を歩き回った後、俺は壁に思い切り拳を叩き込んだ。
彼女は、妊娠...
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