第4章

 弘武が彩未の姿を見かけないことに気づいたのは、結婚式の晩餐会が終わりかけた頃だった。

 朝、家を出るときも、彼は無意識に彼女の部屋へ視線をやった。扉は固く閉じられている。

 ――中で寝ていて、出てくる気がないんだろう。

 そのときの弘武は、そう思い込んでいた。彩未が「海外に行く」と言ったところで、どうせ自分の注意を引きたいだけだ、と。長年そばにいたのだ。そう簡単に、ふらりといなくなるはずがない。子どもじみた意地で、少し甘い言葉でもかけてやれば満足する――その程度のものだと。

 だが、式でも見えない。晩餐会でも、見えない。

 一日じゅう、理由のわからない苛立ちが胸の底に澱のように溜...

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