第5章

 涼夏は無事に男の子を産んだ。

 看護師が赤ん坊を弘武の目の前へ抱いてくる。弘武は壊れものに触れるみたいに、そっと両腕で受け取った。手のひらに収まるほど小さく、しわくちゃで、赤黒い顔。それなのに胸の奥から、言葉にならないものがどっと込み上げてくる。

 喜ぶべきだ。

 ついに子どもを得た。跡取りを得た。

 ――なのに。

 腕の中の小さな命を見つめた瞬間、弘武の脳裏に、まるで別の映像が差し込んだ。

 十五年前。彩未に初めて会ったとき、彼女はまだ七歳だった。両親はヤクザ同士の抗争に巻き込まれて命を落とし、誰も孤児を引き取ろうとしなかった。

 旧い縁に免じて、弘武が彼女を米津の屋敷へ連...

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