第2章

目を覚ますと、昨日の怒りはすでに消え失せ、代わりに息が詰まるほど冷徹な明晰さが私を支配していた。

私はスマートフォンをひっつかんだ。画面には数十件もの未読メッセージが表示されている。その大半は美紀からのもので、他には注文キャンセルの通知が数件混じっていた。

内容を確認しようとした矢先、着信音が鳴り響いた。母からだ。

「遥、あなた……今、ニュースを見たのだけれど……」母の声には、腫れ物に触るような慎重な気遣いが滲んでいた。「大丈夫なの?」

「ニュースって、何のこと?」私は反射的に身を起こした。

「T市新聞よ。京介さんとあの女性が、インタビューを受けていたの」

胃の腑がぎゅっと締め付けられるのを感じた。「二人は、なんて言ってたの?」

「……自分の目で確かめたほうがいいわ」

通話を切ると、私はすぐにテレビをつけて地元のニュースチャンネルに合わせた。ちょうど再放送が始まったところだった。

画面の中では、京介と綾香がスタジオに並んで座っている。二人とも、完璧にコーディネートされた職業的な装いだ。

司会者が明るい笑顔で問いかけた。「松岡さん、渡辺さんとのコラボレーションは非常に期待が高まっていますね。今回の提携について、少しお聞かせいただけますか?」

京介の答えを聞いた瞬間、心臓が止まりそうになった。「綾香は、並外れたビジネスセンスと国際的な視野を持っています。私たちのコラボレーションは単なるビジネスではありません。これは、C市のブライダル業界の未来への投資なのです」

彼はこれまで私に見せたことのないような称賛の眼差しを綾香に向けた。「彼女のプロ意識の高さには、本当に感銘を受けていますよ」

司会者が続けた。「では、石川遥さんについては? お二人の間にも協力関係があったと伺っていますが」

京介は軽く首をかしげ、その表情を一瞬にして冷淡なものへと変えた。「石川さんですか? 彼女は数ある取引先の一人に過ぎませんよ。特別なことは何も。いくつかプロジェクトで関わりはありましたが、あくまで事務的な仕事上の契約でしたから」

取引先。

数ある取引先の一人。

特別なことは何も。

私はテレビを消した。部屋が死のような静寂に包まれる。七年だ。

七年に及ぶ秘密の関係、七年間の忍耐、そして互いに支え合ってきた七年という歳月――それが彼の口にかかれば、たった一言、「事務的な仕事上の契約」に成り下がってしまうのだ。

七年前のあの夜、京介の二十五歳の誕生日を思い出す。彼の狭いアパートで、肌を重ねた後、私は彼の胸に寄り添っていた。

「遥」彼は私の髪を優しく撫でながら言った。「今は色々と複雑だけど、お前が待っていてくれるなら、俺はずっとお前のものだ。音楽業界で足場を固めたら、すべてを公にしよう」

私はそれを、馬鹿みたいに信じ込んでいた。

取引先。その言葉が頭の中で反響し続け、私の心をずたずたに引き裂いていく。

私はスマートフォンを拾い上げ、手癖のようにインスタグラムを開いた。京介のプロフィールが画面の最上部に表示されている。それをタップした瞬間、世界が再び音を立てて崩れ落ちた。

写真が、すべて消えている。

私たちが一緒に写った写真も、投稿はせずにプライベートなアルバムとして大切に保存していた思い出も、すべてが削除されていた。その空白を埋め尽くしていたのは、京介と綾香の仕事風景だ。レコーディングスタジオでプランを話し合う二人、カフェでのビジネスミーティング、さらには昨日の展示会で寄り添う写真までが並んでいる。

写真の下に連なるコメントの数々に、私は吐き気を催した。

「二人とも、最高のカップル!」

「京介くん、いつ彼女として正式発表するの?」

「綾香ちゃん美しすぎ。完全に世界レベルの美しさだね!」

手が震え始めた。それは悲しみからではない。怒りだ。純粋で、焼き尽くすような怒りがこみ上げていた。

再び電話が鳴った。今度は美紀からだ。私は数回深呼吸をして呼吸を整えてから、通話ボタンを押した。

「遥さん、まずいことになりました」美紀の声は張り詰め、切迫していた。「今、事務所にいます。至急、来てください」

二十分後、私は自分のスタジオに到着した。美紀はパソコンの前に座り込んでおり、その顔は真っ青だった。

「一体、何があったの?」

「クライアントのグループチャットで、誰かが変な噂を流しているんです。遥さんが不正競争を行っているとか、倫理に反するやり方で注文を横取りしているとか……」美紀は画面を私に向けた。「それに、今朝だけですでに五件もキャンセルの連絡が入っています」

画面上のチャットログに目を落とす。匿名のアカウントが、いくつものウェディングプランナーのグループで、私に対する悪意あるデマを拡散していた。

「石川遥の会社、品質に問題ありだよ。みんな気をつけたほうがいい」

「納期は守らないし、客への態度も最悪らしい」

「綾香さんに頼んだほうがいいよ。少なくとも彼女は国際的な資格を持ってるし」

私は拳を固く握りしめた。

美紀は一瞬口ごもったが、意を決したように口を開いた。「遥さん……実は、他の会社から仕事のオファーをもらっていて……」

私は彼女を振り返った。背中からさらにナイフを突き立てられたような気分だった。「辞めるつもり?」

「辞めたくはないです。でも……」彼女は私の目から視線を逸らした。「もし会社が潰れてしまったら、私も自分の身を守らなきゃいけないので」

彼女を責めることはできなかった。美紀はまだ二十三歳、大学を出たばかりだ。安定した収入が必要なのは当然だ。それでも、裏切られたという感覚に、呼吸が苦しくなる。

「わかったわ」私は努めて冷静さを保った。「一週間ちょうだい。もし事態が好転しなければ、引き止めたりしないから」

美紀は頷いた。その瞳には罪悪感が滲んでいた。

その時、メールの着信音が鳴った。匿名のアドレスからの新規メッセージだ。

クリックして開く。本文は短い一行だけだった。

「京介に近づくな。さもないと、痛い目を見ることになるぞ」

私はメールのヘッダー情報に目を走らせた。

「美紀、このIPアドレス……」

美紀が身を乗り出して覗き込み、息を飲んだ。「これ、京介さんの音楽スタジオからです」

私たちは顔を見合わせた。綾香ではない。京介本人が送ってきたのだ。

これが、京介の本性……私は冷ややかに思った。私たちの関係を否定するだけでなく、自ら進んで私を攻撃してくるなんて。

椅子に深く座り込むと、胸の奥で怒りが燃え上がるのを感じた。七年間、私は京介のことを理解しているつもりだった。彼には時間が必要なだけで、タイミングさえ合えばいいのだと。私たちには待つ価値のある特別な絆があるのだと、そう信じていた。

取引先。

特別なことは何も。

京介に近づくな。さもないと、痛い目を見ることになるぞ。

私は立ち上がり、オフィスの大きな窓へと歩み寄った。眼下にはC市の通りが広がり、人々が行き交っている。誰もがそれぞれの生活を送り、それぞれの目標を持っている。

私だって、自分の目標を持つべきだわ。

「美紀」私は振り返って彼女を見た。「もしここに残ってくれるなら、反撃するわよ。辞めたいなら止めない。でも、私はもうこれ以上、黙ってやられっぱなしでいるつもりはないから」

美紀が私を見つめ返した。「何をするつもりですか?」

「京介に思い知らせてやるの。喧嘩を売る相手を間違えたってね」

私はスマートフォンを手に取り、ある番号をダイヤルした。T市経済新聞の佐々木さんだ。以前、何度か仕事で一緒になったことがある。

「佐々木さん、石川遥です。京介と彼の新しいビジネスパートナーについて、独占スクープがあるんですけど」

受話器の向こうから、興味津々といった様子の声が返ってきた。「本当ですか、どんなスクープなんでしょう?」

「会いましょう。一時間後、中央通りのあのカフェで」

通話を切ると、美紀が驚いたように私を見ていた。「本気でやるの?」

「向こうが戦争を望むなら、受けて立つわ」私はデスクの上の資料をまとめた。「でも、あなたが私の味方かどうか、はっきりさせておきたいの」

美紀は数秒間沈黙した後、力強く頷いた。

「味方します、遥さん。あんな最低な男、一緒に潰しましょう」

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