第5章

瑠理香視点

 私はふっと嘲笑を漏らした。

 私のことを心配している? もし本気で心配しているというのなら、どうして今まで一本の電話すらかけてこないの?

 そんな薄っぺらい気遣いなど、もう見飽きている。

 記憶が、抑えきれずにあふれ出してくる。

 幼い頃、両親はいつも不在だった。彼らは永遠に商談や会議に明け暮れ、重要な晩餐会とやらでどこかの都市へと飛び回っていた。あの無駄に広いお屋敷にポツンと取り残された私には、ベビーシッターの他にはただ沈黙しか寄り添ってくれなかった。

 七歳の時のピアノコンクールで、母は珍しく私の演奏を見に来ると約束してくれた。私は丸一週間も興奮しっぱな...

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