第8章

 床に膝をつく登美子を見下ろしながら、私はただただ滑稽に感じていた。

「何を言っているの? 正当な競争なのに、どうして私が身を引かなければならないわけ?」

 登美子は唇を噛みしめ、大粒の涙を瞳に浮かべていた。

「身勝手なお願いだっていうのはわかっています。でも、敬明さん……村木家は今、本当に苦しい状況で……」

「だったら、あなたが助けてあげればいいじゃない」

 彼女はハッと息を呑んだ。

「温井家は日向家や角田家には及ばないとしても、それなりの力はあるはずよ。私にプロジェクトを諦めさせて彼を救おうとするくらいなら、どうして自分の家の力を使わないの? 使いたくないの、それとも、使う度...

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