第184章

知らないなら、彼女からもわざわざ言う必要はないだろう。

 どうせ、とうの昔に切れた腐れ縁なのだから。

 そして何より、高橋桜にはもっと相応しい人がいるはずだ。

 そう考えると、山本双葉の心はすでに落ち着きを取り戻していた。彼女はふっと笑みを浮かべ、冗談めかして言った。

「うん、例えば犬を連れた人とか、それとも物乞いでも見かけたのかな」

「……大丈夫ですか? 空港は犬の持ち込みは禁止されていますし、物乞いが入れるはずもありません」

「そうだったね。あぁもう、きっとあなたたちが遠くへ行っちゃうから、私が悲しすぎておかしくなっちゃったのよ。やっぱり残ってくれない?」

 ふふっ、と高橋...

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