第204章

一瞬で、事態がややこしくなった。

高橋桜は雨宮麻里奈に、佐藤和也にはもう相手がいるのだと知らせて、きっぱり諦めさせたかった。

けれど同時に、自分が佐藤和也と関わりがあることは知られたくない。

板挟みだ。

「桜、今日はごめんね。……先に帰っていいよ」

考え込んでいた桜の耳に、ふいに麻里奈の声が落ちてきた。

桜は数秒固まり、それから聞き返す。

「あなたは一緒に帰らないの?」

麻里奈は下唇を噛み、やがて小さく首を振った。

「この状態だと、放っておけないの」

「じゃあ、私なら安心できるって言うの?」

その言葉に、麻里奈はようやく笑って、囁くように言った。

「桜、私は平気。それ...

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