第7章

芹奈視点

「森崎様は、苦しむことなく安らかに旅立たれました」

かかりつけ医の言葉が、森崎邸の主寝室に静かに響いた。私はベッドの脇に立ち、当主の穏やかな寝顔を見つめながら、胸の内で複雑な感情が渦巻くのを感じていた。

病院での対決から三週間が経過していた。私は明良(あきら)の復讐を、あのヒステリックな報復を待ち構えていた。だが予想に反して、当主の容態が急速に悪化し、明良には私への嫌がらせにかまけている時間など残されていなかったのだ。

『もしかすると、これも運命の計らいなのかもしれない』

「芹奈、大丈夫か?」蓮(れん)が優しく私の肩に手を置いた。「ひどく疲れているようだが」

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