第111章

野呂雨芽は、野呂家が手のひらで大事に大事に育ててきた二十数年の姫君。目黒安もまた同じだ。二人とも「譲る」なんて言葉、そもそも辞書に載っていない。

それも、久しぶりの再会だったせいで、最初は互いに相手だと気づけなかった。

結局どうなったかというと――車の窓越しに罵り合い。目黒の母が慌てて出てこなければ、間違いなく取っ組み合いに発展していた。

その後も最悪だった。

野呂雨芽が目黒家の年上連中の前で見せる、あの孝行娘みたいな従順な顔。あれがまた、安には薄っぺらくて仕方ない。安はわがままなところこそあるが、世の中の冷たさもそれなりに知っている。だからこそ、ああいう「お嬢様」が本当に嫁いできた...

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