第124章

日野成謙は眉をひそめ、何も言わずに目黒らいの小さな部屋へ視線をやった。らいの姿はない。林田知音が連れ出したのだろう、と胸の内で当たりをつける。

「話してるのに、ちゃんと聞いてるのか! いいか、さっさとあの女と別れろ。爺様とどんな約束をしたか知らんが、全部なしだ! 医者になりたいならなれ。海市に戻りたくないなら戻らなくていい。見合いが嫌ならしなくていい。だが、あいつと別れることだ。二度と関わるな!」

「あなたは、彼女がどんな人間かも知らない。会ったこともない、理解もしてない。ただ、一度結婚してたから? 子どもがいるから? ……なんだよ。世の中の結婚が、最初から正解を選べるとでも? 一度間違...

ログインして続きを読む