第141章

安検ゲートに着くと、林田知音は彼のスーツケースをひょいと受け取り、「じゃあ……行くね。帰っていいよ。バイバイ!」と言った。

そう言い捨てるようにして、振り返りもせず保安検査の列に並ぶ。

日野成謙は、こんなふうに胸の奥を爪で引っかかれるみたいな、むず痒くて不快な感覚を味わったことがなかった。

その場に立ち尽くしたまま、遠くから、林田知音が列に沿って少しずつ前へ進んでいくのを見つめる。……本当に、一度も振り返らない。

ふいに腹の底が熱くなる。覚えがある感覚だった。前に彼女が海市へ行ったときも、あまりにあっさりしていて、ひと言の連絡もなかった。あのとき自分が追いかけていなければ、彼女は二度...

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