第142章

林田知音は、礼を失わない程度の微笑みを顔に貼りつけたまま、答える気がないのがありありだった。

けれど杉本のおばさんは空気を読まず、なおも身を乗り出してくる。

「そういえば、あたしともちゃんの旦那さんって一度も見たことないのよねえ。ともちゃん、川市の名門に嫁いだって聞いたけど、名門の奥様暮らしってどう? 楽? いい気分?」

「杉本さん、お宅に着きましたよ」

三上乃がやんわり釘を刺す。

ちょうどエレベーターの扉が開き、杉本のおばさんもこれ以上居座るわけにいかず、名残惜しそうに言った。

「明日、うち来てご飯食べなさいよ!」

杉本のおばさんが降りると、ようやく箱の中の空気が静かになった...

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