第53章

「あの人とのことも、長いことずるずるしてきましたから。先輩がいてくれるとしても、私がもう一度音楽の舞台に戻るのは、そんな簡単なことじゃありません。そんな中で、男との関係にまで気を取られている余裕なんてあるはずないでしょう? 今回のことで、私はますます男なんて信じられなくなりました」

あのころ――まだ幼かった年に、目黒雲月は彼女を救ってくれた。あの少年のまっすぐな熱は、たしかに本物だったはずだ。

けれど今は、もう違う。時は流れ、彼女がひと目で心を奪われたあの男は、見る影もない化け物へと変わっていた。

男にとって、女はしょせん戦利品。

慰みもの。遊び道具。その程度なのだ。

「知音、あな...

ログインして続きを読む