第65章

「知音、今回の出品は字画が中心で、楽器や宝飾品もあるの。侮っちゃだめよ。今日の会場に来てるのは、どの業界も大物ばかりなんだから」

「見ればわかる」

林田知音は五年間、家で主婦をしていた。だからといって世間の動きに疎いわけじゃない。まして今の時代、情報が駆け巡る速さは、何よりも速い。

「黒いドレスの人……うちの国の音楽協会の会長よね?」

知音は距離があって、顔までははっきり見えない。

けれど木下実初は、感心したように知音の手をぽん、と叩いた。

「いいじゃない。一発でわかった」

「覚えてる。たしか、バークレーでしばらく交響楽団を指揮してたことがあって……ほら、あの年、私のオケが私に...

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