第69章

林田知音が一歩踏み出し、手を振り上げて平手打ちを食らわせようとした、その瞬間。

目黒雲月が素早く彼女の手首をつかみ取った。

「林田知音。俺の目の前で、うろちょろするなって言ったはずだろ」

吐息が耳朶をかすめるほど近い距離で、低い声が落ちる。

「とっくに忠告したよな。目黒家を出たら、お前は何者でもない」

「目黒雲月……本当に、憎たらしい」

「へえ? 俺にちょっかい出したのは、お前のほうじゃなかったか」

目黒雲月は鼻で笑った。怒りで赤く染まった林田知音の頬を眺め、その瞳の奥には愉悦が滲む。

「お前のヒモはどうした? 俺の前じゃベタベタしてたくせに、こういう時は出てこないのかよ」

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