第88章

キッチンでは、林田知音が手際よく料理をしていた。そこへ目黒らいが、匂いに釣られるみたいにやって来る。

「ママ、なに作ってるの? おいしいやつ?」

「もちろん、らいちゃんの大好物よ。トマトと卵の炒めものに、おにぎり。桂魚の蒸しもの、それから大きいエビのむき身もね」

「やっぱり全部らいちゃんの好きなやつだ! らいちゃん、ママのごはんがいちばん好き!」

木下実初の社員寮は三LDKで、それなりに広い。普段は二、三人しか住んでいないから静かなものだったのに、子どもが一人増えただけで、急に「家」らしい温度が生まれた。

スタジオの仲間たちも、顔立ちがよくて性格も素直なその男の子を、みんな可愛がっ...

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